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　　視神経萎縮と緑内障
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お問合わせの多いご質問に対する一般的な回答です。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　やまむら眼科医院　山村敏明


　視神経萎縮は、いろいろな原因で起こる病気ですが、代表的な疾患の１つとして「緑内障」がよく知られています。緑内障患者は全世界で６７００万人と推定されています。しかし、緑内障は自覚症状が少ないため（病初期は無症状といっても過言ではない）、医療先進国においても未検査・未治療のことが多く、実際の患者数は発表された数の２倍とも言われています。
　さて、緑内障や視神経疾患の診断には、集団検診や健康診査のスクリーニングも含め、眼底所見、特に”視神経乳頭”所見が重要です。


　　　　　　　視神経と視神経乳頭との解剖学的な関係

　視神経線維とは、網膜内にある細胞「神経節細胞」の一部・・長く伸びた細胞突起（軸索とよびます）・・です。視神経は、網膜各部より集まった約８０万本の視神経線維（軸索）がその支持組織で束ねられたもので、視神経乳頭部では直径約１．５ｍｍです。この神経線維束の終末は、脳内の外側膝状体とよばれるところにあり、ここでシナプスとよばれる神経特有の”連結”組織により、次のノイロン（神経細胞体と突起）に情報を伝達します。
　もし、視神経の一部に明らかな障害が発生すると、まず神経終末（脳側）に向かって軸索の変性が進みますが、眼球側にある細胞体は受傷後３－４週までは正常です。その後、障害部位から網膜内「神経節細胞」に向かい変性が進みますので、４－６週頃から視神経乳頭に蒼白部が現れ（いわゆる”視神経萎縮”の所
見）、６－８週には細胞体も死滅するとされています。


　　　　　　　　　視神経萎縮の分類

 1. 原発性（単性）：球後視神経炎、視神経圧迫病変などによる網膜神経節細胞ないしその軸索の障害による萎縮で、視神経乳頭部の浮腫を伴いません。

 2. 続発性（炎性）：慢性うっ血乳頭が代表的な病態です。視神経乳頭部の浮腫を伴います。

 3. 部分的：神経線維束の部分的な病変。

  3a. 中毒性、栄養障害性、遺伝性視神経疾患の一部:  中心視野・中心視力に関わる神経線維の障害が好発します。よって、視神経乳頭部では「耳側蒼白」とよばれる所見が多くなります。
　3b. 虚血性:  上方ないし下方網膜の神経線維の障害が好発します。
  3c. 脳内の視交叉部ないし視交叉－外側膝状体間に障害が及ぶ病気：　鼻側網
膜と中心網膜に関わる神経線維が障害されることが多く、視神経乳頭部は「帯状蒼白（鼻側・耳側）」とよばれる萎縮所見を呈します。視野検査では耳側欠損を呈します。

 4. 後シナプス性（外側膝状体シナプス後方の障害によるもの）：胎生（胎児）期、乳児期、幼児期早期の未発達の脳組織では、この時期の脳障害により視神経萎縮を来たすことがあります（まれに成人にもみられます）。

 5. 緑内障性：視神経乳頭の陥凹拡大（注記）が特徴的です。また、病初期には、視神経乳頭の辺縁（ふち）は正常所見を呈します。中心視力も緑内障が進行するまで低下しません。病期がかなり進行しても視神経乳頭の辺縁欠損（くぼみ）は部分的です。

 6. 網膜性：網膜色素変性症などの網膜疾患によるもの

注記

  視神経線維が上記のいずれかの原因で変性・萎縮すると、視神経乳頭部でも神経線維の体積は減少します。結果的に、表面は陥凹し、病気の進行につれて、陥凹は拡大します（視神経乳頭部の陥凹拡大といいます）。ただし、[２]炎性（非動脈炎性）では陥凹は小さく、[５]緑内障性では、かなり特徴的な陥凹拡大を呈することが知られています。
　なお、視神経乳頭部には、生理的な陥凹もありますので、真の病気との鑑別には眼科医の診察・判断が必要となります。

　文献

　Van Stavern GP,他: Optic neuropathies. Ophthalmology Clinics of 
  North America 14:61-71,2001.  
  Greenfield DS: Glaucomatous versus nonglaucomatous optic disc cupping:  Clinical differentiation. Seminars in Ophthalmology 14:95-108,1999.

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