-----BEGIN PGP SIGNED MESSAGE----- Hash: SHA1 - -- コンタクトレンズによる結膜炎について Sender: owner-i Precedence: bulk Reply-To: yamagk@purple.plala.or.jp Second Opinion - i@mail i@メール お問合わせの多いご質問に対する一般的な回答です。                  やまむら眼科医院 山村 敏明 本文の著作権は(株)北陸アイティエス が所有しています。同社ビジョン編集室のご厚意により、配信いたします。 北陸アイティエス ビジョン編集室 編集・発行 ビジョン 2001.4.26 ****************************************************************** コンタクトレンズによる結膜炎 -巨大乳頭結膜炎-                   やまむら眼科医院院長                   山村敏明 (野々市町)      使用者の増加に伴って1-3%余の人に発症  コンタクトレンズ使用者は、日本では1200万人、米国では3000万人と言われますが、その合併症の1つに巨大乳頭結膜炎(以下GPCと略)があります。上まぶたの裏側(眼球側)の眼瞼結膜に見られる炎症で、乳頭増殖と呼ばれる所見を伴う結膜炎のため、このように命名されています。米国での発生率はレンズ使用者の少なくても1-3%とされ、日本でもコンタクトレンズ使用者の増加と共に、”ありふれた”目の病気の1つになっています。      かゆみや目ヤニ。進むとレンズがずれやすく  GPCは、レンズ使用開始後8-10ヵ月ほど経って発病することが多いとされ、ソフト、ハードのいずれのレンズでも見られます。初期症状は、レンズを外した時や装用中に目のかゆみがあり、粘液状の目ヤニが出たり、レンズが汚れて軽度のかすみを感じたりしますが、極めて軽微なため、定期的な検診などで初めて発見されることもあります。  しかし、病気が進行するにつれて、レンズ装用中の違和感、かゆみ、レンズの汚れ、レンズのずれ、かすみ、目ヤニ、充血など、自覚できる多様な症状が現れます。特に、レンズがずれやすくなった場合はGPCが進行している徴候です。また、稀にまぶたが下垂したように見えることがあります。      ハードではソフトより発生が遅いとの報告も どんな場合にGPCになりやすく、又はなりにくいのかについては次のような国内外での報告があります。 1)花粉症の人やハウスダストなどにアレルギーを有する人、アレルギー体質の人はなりやすい 2)ハードレンズでは、ソフト系に比べて発生や進行が遅い 3)ソフト系の全販売商品4グループ(1999年3月に分類)間ではレンズの汚れやすさなどに差はあるが発生率に差はない。 4)ソフト系の中でも、使い捨てレンズに比べて、通常のレンズや頻回交換レンズは発生率が高く、頻回交換レンズでは、交換期間が長いものの方がGPCが多い 5)保存液、洗浄液、消毒液などのケア用品の種類による差はない 6)煮沸消毒法はGPCになりやすい人、発病した人は使用しない方がよい  -などです。      レンズケアや消毒の徹底、装用短縮で改善へ  GPCも初期であれば、レンズのケアや消毒を徹底して、レンズ装用時間を短縮するなどの心掛け1つで症状が改善します。コンタクトレンズのケアは、レンズのこすり洗いを徹底し、通常のレンズでは蛋白分解酵素製剤(毎日、週1回のものがある)を使用します。また、こすり洗い不要のソフト系洗浄・消毒液もあります。  一方、レンズを新しいものや別のデザインに、通常レンズや定期交換タイプから使い捨てへ、さらにはソフトからハード系に変えた方がよい場合もあります。レンズのフィッティングなどの再チェックを受け、眼科医に相談してください。      改善すれば治療しながらレンズ装用が可能に  GPCの治療では、コンタクトレンズ専用の人工涙液型点眼液を1日数回使用し、装用中のレンズの汚れをできるだけ取り除き、抗アレルギー点眼液(炎症に関わっている結膜マスト細胞を安定化させる作用がある)を併用します。 こうしたレンズケアと結膜炎治療の結果、上まぶたの裏側の充血やキズ、目の症状などが改善すれば、治療を続けながらレンズを装用することもできます。しかし、重症の場合は装用を一時中止し、治療を受けるのが最善です。いずれにしても、早期に適切な治療を受けることが進行を予防する上でとても重要です。 ****************************************************************** ***注 釈*** <巨大乳頭結膜炎の病因>  1974年(昭和49年)に初めて報告された病気です。原因として、コンタクトレンズが圧倒的に多く、ときに、義眼や手術時の縫合糸が原因となります。発症のメカニズムについては、充分に解明されたわけではありませんが、元来、コンタクトレンズ素材には、人の免疫反応を活性化する作用はありませんので、以下のような説明がなされています。つまり、眼瞼結膜表面は、まばたきの度にコンタクトレンズにより擦れて、キズがつきます。結膜が障害されると、レンズに付着した変性タンパクなどに対して、マスト細胞や遅延型過敏反応などが関与した複雑な免疫反応(春季カタルとよばれる病気にとても似ています)が起ってしまうと考えられています。異常結膜乳頭(炎症性隆起)の直径が1mmを超える巨大乳頭の消失には、数ヵ月から数年かかることもあります。 <ハード系とソフト系の差> ハードレンズでは、ソフト系に比べてGPCの発生および進行が遅いといわれている理由として、ハードレンズはレンズ直径が小さいこと、レンズの洗浄が容易であることが考えられています。 以上 -----BEGIN PGP SIGNATURE----- Version: GnuPG v1.2.1 (MingW32) iD8DBQE+WHpCWKpMiVYLcIcRAuLLAKDL1iZrsqB6TugU+W374N12oTfpKgCfTtbl weypwnrRr5Z+WOythcKRjV0= =EC9P -----END PGP SIGNATURE-----