-----BEGIN PGP SIGNED MESSAGE----- Hash: SHA1 - -- 眼底を診(見)てもらうということ -汎網膜硝子体検査をご存知ですか- Sender: owner-i Precedence: bulk Reply-To: yamagk@purple.plala.or.jp Second Opinion - i@mail i@メール お問合わせの多いご質問に対する一般的な回答です。 やまむら眼科医院 山村敏明 はじめに  黒い小さなものが目の前に飛んで見える---。  飛蚊症(ヒブンショウ)とよばれる症状です。突然、自覚(出現)しますので、不安感の強い症状の1つです。原因は硝子体(ショウシタイ)とよばれる眼内の透明組織の中に混濁が発生したためです。硝子体は、光を感じる網膜細胞の前に位置するため、混濁は”かげ(影)”として自覚されることになります。また、硝子体は、ゲル状の組織のため、目・身体を動かすと内部の混濁は不規則に移動し、あたかも「蚊が飛んでいる」ように見えます。  では、どうして突然、混濁が生じるのか? 眼の病気についての解説書、パンフレットでは、必ず「飛蚊症」の項目がありますので、省略させていただきます。網膜剥離の”初発”症状のことがありますので、必ず一度は眼科医の診察をお受けになって下さい。  さて、ここでは眼科医に診てもらったときの「質」(範囲、精密度)についてご説明いたします。  たとえば、糖尿病による網膜症が悪くなった時、硝子体手術などの高度の治療を受ける前などには、当然精密で十分な眼底検査が必要です。この検査が病気の予後・手術の成績を左右することになるからです。  最初に診察料(代)について。  ところが、これまで(正確にいいますと、平成12年3月31日まで)は、眼底をチラッと簡単に見てもらっても、30分以上かけて詳しく診てもらっても、医療機関に支払う眼底検査料は同額でした。検査の「質」による差別化はありませんでした。患者様の診察に際して、”時間をかけても、診察代はいっしょだから”と手抜きをする医者はいないと思いますが、不思議なことです。 眼科で診察を受けられた方は、ちょっと思い出していただけますでしょうか。 細隙燈顕微鏡検査  診察時「ここにあごを乗せて下さい」と、スタッフまたは先生に告げられて、その後、片眼ずつかなりまぶしい光を当てられましたね。 --これは細隙燈(サイゲキトウ)顕微鏡による検査です。  この時点では、眼底は全く見ていません(主語=医師)。 眼底検査  ついで、眼底検査となりますが、医師の後方の壁などに指標があり、「そこをじっと見ていて下さい」と言われてみていると、先生が片手に光源、片手にレンズをもって片眼ずつ光を当てる。 --これは手持ち電気検眼鏡による眼底検査です。 耳鼻科の先生が、ひたい(額)で固定している診察器具のような、額帯式の電気検眼鏡で診察する先生も多いと思います。  この検査で、ようやく眼底のほんの一部が(チラッと)見えています(主語=医師)。診察ではありませんが、人間ドック、眼科検診などで利用される眼底カメラによる写真撮影の方が、この検査より精度は上です。  実際の眼科診療では、これら検査を組み合わせて診断しているのですが、硝子体、網膜、および両者の界面を詳しく見てもらうには以下のようにいたします。  瞳孔を散大させる検査用点眼液を1-2回点眼してもらい、待合室で15分ほど待ちます。このお薬は4-5時間作用しますので、点眼後の諸注意(自動車の運転が困難となる等)は必ず点眼前にお聞き下さい。スタッフ間では散瞳(サンドウ)と言ったりします。 細隙燈顕微鏡による汎網膜硝子体検査   点眼後の細隙燈顕微鏡検査では、瞳孔が開いていますので、前部硝子体、水晶体などがよく見えます。でも、これだけでは眼底は見えません(以下、主語=医師)。非球面前置レンズとよばれる特殊な小さいレンズを眼の前に置いて、診察します。このレンズを使用すると、後方の硝子体組織や網膜、および両者の界面の診察ができます。しかし、見える範囲は主に眼球の後方ですので、最周辺部(前方)の網膜・硝子体を見るためには、直接角膜にレンズ(三面鏡といいます)を乗せて診察します。表面麻酔薬を点眼すると、20秒ほどでこの検査が可能となります。  これで、大部分の眼内の診察が済んだことになりますが、網膜の専門医でも見えないところがあります。この場合は、ベット上での診察となります。額帯式の電気検眼鏡(双眼倒像鏡といいます)が光源となります。強膜圧迫子(アッパクシ)とよばれる眼球の内面を見やすくする器具を先生が操作しながら、診察します。強膜圧迫子の外筒付き三面鏡とよばれる器具があれば、細隙燈顕微鏡の前に座り、あごを乗せたままの診察となります。  以上で、網膜のほぼ全域の診察が可能となりますが、網膜の最前方(鋸状縁)よりさらに前方(毛様体)などまだ見えません(主語=医師)。この部分の観察には、特殊な超音波診断装置(通常の眼科超音波装置より高周波を利用するため、毛様体などの形態異常の診断に威力を発揮します)が必要となります。また、手術中に観察することになります。  角膜の高度の混濁、進行した白内障、硝子体の強い混濁・出血などがあれば光源を当てて眼内を観察することは困難ですので、超音波装置・電気生理的検査などによる検査も行います。   眼科を受診された方みなさまが汎網膜硝子体検査を受けられる必要性はありません。  しかし、「飛蚊症」を自覚されて受診したのに、瞳孔を散大させる点眼液のない”チラッとだけ”の眼底検査では、病気の発見率は当然極端に悪くなります。 注 記  なお、汎網膜硝子体検査とは検査料(眼科診療報酬点数)に基づく検査名です。  具体的には、  増殖性網膜症、網膜硝子体界面症候群又は硝子体混濁を伴うぶどう膜炎の患者に対して、散瞳剤を使用し、細隙燈顕微鏡及び特殊レンズを用いて網膜、網膜硝子体界面および硝子体の検査を行った場合に限り算定する。月1回だけ請求できる。等(平成12年4月から) 通常の眼底検査の約3倍の料金です。  よって、治療の全く必要のない”良性”の硝子体混濁に対して、本検査を実施しても、通常の眼底検査となります。検査の結果、上記病変がさらに発見されますと、汎網膜硝子体検査の対象となります。 以上 -----BEGIN PGP SIGNATURE----- Version: GnuPG v1.2.1 (MingW32) iD8DBQE+WHoVWKpMiVYLcIcRAqiUAKDGZOar3StcDRoMHyx+5HQ5Heu97ACfbNnz G/sbb+uCLzkJkrSXVySTcKw= =cgGw -----END PGP SIGNATURE-----