-----BEGIN PGP SIGNED MESSAGE----- Hash: SHA1 - -- アレルギー性結膜炎について Sender: owner-i Precedence: bulk Reply-To: yamagk@purple.plala.or.jp Second Opinion - i@mail i@メール お問合わせの多いご質問に対する一般的な回答です。 やまむら眼科医院 山村敏明 体内でおこる免疫反応について(Ⅰ型アレルギー)  遺伝的にアレルギー体質の方は、アレルギーの原因となる花粉など(アレルゲン)に何年も接していると、体内にアレルゲンに反応する抗体蛋白(免疫グロブリンIgE)ができることがあります。  このIgE抗体は血液中では好塩基球とよばれる細胞に、組織の中ではマスト細胞に結合します(アレルギー反応の”準備状態”となります)。その後、同じアレルゲンが体内に入ると、IgE抗体との結合が引き金となり、この細胞からかゆみなどのアレルギー症状を引き起こす物質が放出されます。この物質には、細胞に貯蔵されているもの(ヒスタミン、好酸球遊走因子など)と新たに生成されるもの(ロイコトリエン、トロンボキサンなど)があります。 病名について  I型アレルギーによっておこる結膜炎の中で、結膜に増殖性変化のみられないものをアレルギー性結膜炎とよびます。季節性と通年性の2種類があります。 季節性アレルギー性結膜炎の中で、花粉によるものは花粉性結膜炎とよぶことがあります(日本眼科医会の定義より)。  アトピー性皮膚炎に合併した場合、アトピー性角結膜炎、ないし春季カタルとよばれます。また、コンタクトレンズ・義眼などが原因となっておこる巨大乳頭結膜炎も”アレルギー性”とよばれます。 診断法について   症状の現れる季節・時間帯などについての問診   眼の症状(目のかゆみ、涙がでる、”めやに”がでる)   眼以外の症状(鼻水、くしゃみなど)   結膜の所見  このような一般的な診察のみで診断されることが多いようです。  ただし、確定診断(診断困難症例を含めて)のためには検査が必要となります。好酸球とよばれる細胞を分泌物の中から見つける簡単な検査です。結膜からですと、細胞1個でも見つかると”アレルギー性結膜炎”と診断できます。  この方法について解説いたしますと、点眼剤で結膜表面を麻酔し(点眼後15秒ほど)、綿棒などで結膜(瞼の裏側)を軽くこすり、細胞を集めます。ガラス板の上で、細胞を染色して顕微鏡で検査します。5分ほどで判定できます。しかし、症状が軽度の場合などは検査が偽陰性となることがありますので、異なる時期に再検査をすることがあります。  その他に、皮膚テスト(プリックテストなど)や血清検査でアレルゲンを推定することもできます。 薬物療法  平成13年1月31日、ヒスタミンH1受容体拮抗薬 塩酸レボカバスチン点眼液(商品名リボスチン点眼液 0.025% )が発売されました(本剤の解説は付記をご覧下さい)。アレルギー性結膜炎の症状を抑えるため、本剤や抗アレルギー点眼薬を点眼します。症状が強い時、ステロイド薬の点眼液を併用したり、抗ヒスタミン薬の内服薬を使用します。  花粉性結膜炎では、花粉飛散の予測される約2週間前から抗アレルギー点眼薬を開始すると、症状を抑える効果があります。 花粉前線などをご参考にされて、発症前の診察をおすすめいたします。  ここで、市販されている抗アレルギー点眼薬の名前と容量用法を列記しました(平成13年2月9日現在)。特に、一日当たりの点眼回数はお間違えのないようにして下さい。 - ------------------------------------------------------------------ 抗アレルギー点眼薬 成分:クロモグリク酸ナトリウム 点眼回数:1日4回   インタール点眼液    インタール点眼液UD    クールウエイ点眼液   ルゲオン点眼液   クモロール点眼液   イスラン点眼液   メインター点眼液   クロモリーク点眼液   イフラジン点眼液    オフタルギー点眼液    シズレミン点眼液    ドルーミン点眼液    ミタヤク点眼液 成分:アシタザノラスト 点眼回数:1日4回点眼 ゼペリン点眼液 成分:イブジラスト 点眼回数:1日4回点眼 アイビナール点眼液 成分:アンレキサノクス 点眼回数:1日4回点眼 エリックス点眼液 成分:フマル酸ケトチフェン 点眼回数:1日4回点眼   ザジテン点眼液   アレギーS点眼液   ケトチフェン点眼液T  ケトテン点眼液  フサコール点眼液 成分:ペミロラスト 点眼回数:1日2回点眼   アレギサール点眼液  ペミラストン点眼液 成分:トラニラスト 点眼回数:1日4回点眼   リザベン点眼液   トラメラス点眼液 - ----------------------------------------------------------------- 抗アレルギー点眼薬の副作用   点眼しても眼のかゆみ・充血が強くなったりした場合、眼科医にご相談下さい。 禁忌(抗アレルギー薬を内服したり、点眼できない方)  妊娠または妊娠している可能性のある方です。 (催奇形性の報告があります)。 また、授乳中の女性も避けた方がよいとされています。  なお、アレルギー性結膜炎に対する一般的な諸注意(マスク、掃除など)は家庭の医学書などをお読み下さい。 特殊な治療法(減感作療法など)は、専門医のアドバイスをお受け下さい。 花粉性アレルギーの原因となる植物名 下記の表をご覧ください。 その後報告された草本花粉として        ヨシ(アシ)  オオバコ科 オオバコ  マキ科 マキ属   イネ科 ススキ   イネ科 エノコログサ(ネコジャラシ) などがあります(暫時、追加掲載いたします)。 <この表は文献(佐橋紀男先生:アレルギーの臨床 17巻3号: 193-197頁,1997年)等から引用いたしました> - ----------------------------------------------------------------- 日本の花粉アレルギー原因植物一覧(1998年12月現在) ( )内の数値は報告年(学会発表を含む) 木本花粉 裸子植物 イチョウ科 イチョウ(1978) マツ科 クロマツ(1974)、アカマツ(1975) スギ科 スギ(1963)、コウヤマキ(1984) ヒノキ科 ネズ(1994)、ヒノキ(スギとの共通抗原大) イチイ科 イチイ(1995) 被子植物(双子葉) ヤナギ料 ヤナギ(1980) ヤマモモ科 ヤマモモ(1980) クルミ科 クルミ(1976) カバノキ科 シラカンバ(1969)、ハンノキ(1970) オオバヤシャブシ(1989) ブナ科 コナラ属(1969)、クリ(1984) ニレ科 ケヤキ(1975) バラ科 モモ(1977)、バラ(1978)、リンゴ(1978) ウメ(1980)、ナシ(1981) サクランボ(1985)、サクラ(I985) マメ科 アカシア(1979) ミカン科 ミカン科(1993) ブドウ科 ブドウ(1984) ツバキ科 ツバキ(1989) モクセイ科 オリーブ(1994) キョウチクトウ科 キョウチクトウ(1970) 草本花粉 被子植物(双子葉) クワ科 カナムグラ(1968) イラクサ科 カラムシ(1975) タデ科 ヒメスイバ・ギシギシ(1973) アカザ科 テンサイ(1969) ナデシコ科 ナデシコ(1986) アブラナ科 アブラナ属(1991) バラ科 バラ、イチゴ(1972) セリ科 ウイキョウ属(1995) イソマツ科 スターチス(1990) ナス科 ピーマン(1983) キク科 ブタクサ(1961)、ヨモギ(1969) ハルジオン(1972)、キク(1973) ジョチュウギク(1974)、タンポポ(1976) セイタカアキノキリンソウ(1977) イエローサルタン(1979) アフリカキンセンカ(1987)、コスモス 被子植物(単子葉) ガマ科 ヒメガマ(1971) ガマ・コガマ(ヒメガマと共通抗原大) イネ料 カモガヤ(1964) 、イタリアンライグラス(1965)    イネ(1969)、スズメノテッポウ(1970)      オオスズメノテッポウ、ケンタッキー31フェスク(1971)    スズメノカタピラ(1985) ユり科 グロリオサ(1992) <付記> ヒスタミンH1受容体拮抗薬-花粉症のための画期的な点眼液- Q1 どのようなお薬ですか? A アレルギー性結膜炎の主症状である「眼のかゆみ」を抑えるお薬です。「かゆみ」は、炎症により眼の表面に遊離・増加したヒスタミンという物質が、神経(三叉神経の終末枝)のヒスタミンH1受容体を刺激するために起きます。拮抗薬が、ヒスタミンより先にこの受容体に特異的に作用しますと、ヒスタミン刺激を遮断(拮抗)することができます。「かゆみ」が軽減したり、治ります。 Q2 ヒスタミンH1受容体とは何ですか? A 神経終末などには数種類のヒスタミン受容体があって、それぞれの役割を担っています。  アレルギー性結膜炎・鼻炎にみられる「かゆみ」および、毛細血管の拡張による「充血・浮腫」は、H1受容体が深く関わっております。  因みに、胃潰瘍のお薬の1つに、H2受容体拮抗薬があります。胃酸分泌を抑えるお薬として有名です。   Q3 なぜ新薬が必要なのですか? A これまで、花粉症の治療として、抗アレルギー点眼液とステロイド点眼液が使用されてきました。  抗アレルギー点眼液は、結膜に存在するマスト細胞(肥満細胞ともよびます)からヒスタミンなど「かゆみ」を惹起する物質が放出されることを抑制する薬剤です。主な作用は「細胞膜の安定化」ですので、点眼後、効果発現までに時間がかかります。また、遊離されたヒスタミンには直接作用しませんので(抗ヒスタミン作用を有した製品は、1種類だけ販売されていましたが)、急激・強い「かゆみ」を抑えることはできません。  ステロイド点眼液は、抗アレルギー点眼液単独では、効果が不充分のときに使用されます。炎症による緒症状に優れた効果のある点眼液ですが、安全性に問題があります。長期間使用しますと、緑内障を誘発することがあります。また、ヘルペスウイルスや細菌による眼感染症に対する注意も必要となります。   Q4 いつ販売されますか? A 最近発売されました。  点眼液は、すでに世界の80ヶ国以上で承認されておりましたが、日本では、今年(2001年)1月31日、発売されました。 塩酸レボカバスチン点眼液です。レボカバスチン点鼻薬はすでに日本で発売されており、有用性がみとめられています。  製造元はベルギーのヤンセン社、販売元は参天製薬、商品名はリボスチン点眼液 0.025% です。アレルギー性結膜炎に対して健康保険が適応されています。指定医薬品ですので、調剤薬局での購入の際には、医師の処方箋が必要です。 Q5 いつから点眼をはじめたらいいですか? A これまでの抗アレルギー点眼液は、あまり即効性が期待できないお薬ですので、花粉症であれば、季節前からの(予防的)投与法が、薬効を最大限に発揮させるために、推奨されていました。  リボスチン点眼液は、臨床上、初回点眼後3日目から自覚症状、眼所見の改善がみられています。また、抗アレルギー点眼液と同様に、マスト細胞からのヒスタミン遊離抑制作用も認められていますので、季節前(予防的)投与も、もちろん有効であると推測されますが、花粉症では発病ごく早期、または、数日前からの点眼が最もよいのではないでしょうか。 Q6 花粉症以外の病気でも有効でしょうか? A もちろん、ハウスダスト、ダニなどによる通年性のアレルギー性結膜炎、春季カタルにも有効です。 Q7 点眼後、眠気などはでませんか? A 低濃度の抗ヒスタミン剤を局所にのみ使用するので、眠気のほか、倦怠感・頭痛などの副作用は、ほとんどないようです。  わが国の臨床試験成績の集計結果では、眠気・頭痛は0.5%未満です。   また、リボスチン点眼液は、H1受容体以外の受容体には作用しませんので、他の副作用の発現も少ないことが推測されます。  因みに、受容体選択性がないお薬の場合(抗ヒスタミン剤の内服薬の多くがこれに該当しますが)、「かゆみ」は改善しても、眠くなったり、まれに、緑内障を悪化させたりします(抗コリン作用といいます)。   Q8 子供の眼に点眼してもよいですか? A リボスチン点眼液は、ベルギー・ドイツ・スウェーデン・デンマークにおいて、小児患者でも使用されており、わが国では販売前に小児患者に対する一般臨床試験が行われました。この試験では、実際には5歳以上に使用され、有効であったようです。アレルギー性結膜炎の重症型である春季カタルでの改善率は、75%(6/8例)でした。  これまでの小児使用例で、重大な副作用は報告されていないようです。  また、点眼液のpHは、中性域に調整されているので、点眼後の刺激症状(しみる感じ)は少ない特徴があります(わが国の臨床試験成績の集計では、1.9%)。 Q9 他に点眼時注意することはありますか? A 点眼液のpHを中性域に調整するため、懸濁液となっています。使用時には、その都度容器をよく振ってから点眼して下さい。 防腐剤、安定化剤などを含有しておりますので、コンタクトレンズを装用した状態で点眼しますと、眼障害が起きる可能性があります。コンタクトレンズユーザーの方は、使用前に医師とご相談下さい。 妊産婦・授乳婦様へ  動物実験(経口投与法)では、臨床投与量の33、000倍以上の大量投与で胎児の奇形・死亡が発生しています。通常の点眼方法では、まず胎児への影響はないと考えられますが、使用前に医師とご相談下さい。 参考文献  1. リボスチン点眼液文献集(薬理・臨床薬理編):参天製薬編 2. リボスチン点眼液文献集(臨床編):参天製薬編 - ----------------------------------------------------------------- 以上 -----BEGIN PGP SIGNATURE----- Version: GnuPG v1.2.1 (MingW32) iD8DBQE+WHn4WKpMiVYLcIcRAnAYAJ9iIOsMmqSh6ITcbX7WL1BOVnq/igCgsTCX odKZ7IkW9p9lpR+JSZWcrvk= =kOQe -----END PGP SIGNATURE-----