-----BEGIN PGP SIGNED MESSAGE----- Hash: SHA1 - -- 光視症と飛蚊症 Flashes and Floaters Sender: owner-i Precedence: bulk Reply-To: yamagk@purple.plala.or.jp Second Opinion - i@mail i@メール お問合わせの多いご質問に対する一般的な回答です。 やまむら眼科医院 山村 敏明 「飛蚊症」は、ありふれた目の病気(症状)の1つです。 たとえば、 「昨日、突然黒いものが見えるようになった。」 「ご近所の方が、”私も同じ症状で眼科の先生に診てもらったら、心配ない、治療法がない、放置してもよい”などとお話されていた。」 「でも、心配だから受診しました。大丈夫ですか?」 このような動機・理由が多いのではないでしょうか。 「飛蚊症」の原因疾患として、「網膜裂孔」が発見される頻度は、外国の論文では10~34%、おおよそ16.5%とされています。 今回、Diamondの論文(1992,文献1)を引用し、光視症「コウシショウ」と飛蚊症「ヒブンショウ」について、簡単に解説いたします。 - ----------------------------------------------------------------- 要約 「光が見える」「何かが飛んで見える」症例を対象として、その原因を検査しました。 [女性111名、男性59名(合計170名) 年齢:平均60.5歳、15~89歳] 片眼に症状を自覚した場合、1/4の症例では、重大な眼の病気が発見され、 特に「網膜裂孔」は17.7%の症例にみられました。 - ----------------------------------------------------------------- これは、100万人の医療圏内で1年365日、24時間体制の診療を行っている英国の眼科救急病院のデーターです。 調査期間6ヵ月の間に、「光視症」ないし「飛蚊症」を自覚し、受診となった170名の症例が対象です。 初診時、「視力が低下した」「視野が狭くなった」など、明らかに眼内の病気が疑われる症状を呈した症例は、調査に含まれておりません。 原因疾患の中で、眼科救急疾患である網膜裂孔(モウマクレッコウ)の頻度は、  左眼、右眼どちらか片眼のみの症状の場合で、かつ 飛蚊症(+)動いて見えるもの→1つ : 3.7% 飛蚊症(+)動いて見えるもの→複数 :18.6% 光視症(+)飛蚊症(-):15.0% 光視症(+)飛蚊症(+):24.6% 全 体 :17.7% でした。 片眼に何かが動いて見え、光りも見えるようになったとき、 原因の約1/4は網膜裂孔であったということです。 このような症状を有する網膜裂孔を放置(未治療)しますと、およそ33~46%の症例では網膜剥離に進展するという報告がありますので、網膜裂孔が発見された時、直ちに治療を受けましょう。 因みに、全症例147症例中、26名に網膜裂孔が発見されています。 片眼に飛蚊症(動いて見えるもの)が1つだけ見えるとき、 網膜裂孔の頻度は3.7%と低いものです(27例中1例)。この頻度は、症状が無かった眼に偶然発見された網膜裂孔の頻度と比べて、統計学的には有意差がなかったため、「片眼のみに動くもの1つ」の場合は、網膜裂孔の随伴症状とはいえません。ただし、この結論については、Diamond も述べていますが、今回の対象症例数が少ないことも関連しているかもしれません。 Flashes & Floaters(光視症 と 飛蚊症)の原因をリストアップしてみますと(文献1)、 症状は片眼のみ(147症例中): 後部硝子体剥離のみ           44.9% 網膜裂孔                17.7% 硝子体出血、初診時原因不明        4.0% 片頭痛                  1.4% 後部硝子体剥離(網膜分離症を伴う)    2.0% 後部硝子体剥離(軽度の硝子体出血を伴う) 2.0% 後部硝子体剥離(格子状網膜変性を伴う)  1.4% 糖尿病網膜症(増殖型)          1.4% 網膜剥離                 0.7% 後部ぶどう膜炎              0.7% 正 常                 23.8% 症状が両眼にみられる場合(23症例中): 正 常                 47.8% 後部硝子体剥離             30.4% 片頭痛                  8.7% 網膜裂孔                 8.7% 硝子体出血、初診時原因不明        4.3% 文献1)   Diamond JP: When are simple flashes and floaters ocular emergencies? Eye 1992; 6:102-104. - ----------------------------------------------------------------- 飛蚊症は、メール、掲示板などでお問い合わせの多い病気・症状の1つです。 実例(民間サイト DrNAVI より) 飛蚊症についての回答例です - -----------------------------------------------------------------  家庭の医学書、新聞、TV、医院・病院のパンフレットなどに、必ず登場・記載されている、とても「ありふれた」目の病気です。お手元に、資料がありましたら、ご一読下さい。  眼球の内部に、硝子体(ショウシタイ)とよばれる透明な組織があります。この中に混濁がでますと、眼の中に入った光は、この混濁のため透過できず眼底に影を落とします(黒いものとして自覚されます)。 硝子体は、ゼリー状~液状の組織(ゲル状)なので、体の動き、眼球運動とともに、混濁もわずかに揺れ動きます。同時に、影も不規則に動きますので、「蚊が飛んだように」、「雲が動いたように」、「糸状のものが動く」などと形容される様々な症状を自覚することになります。  さて、その混濁の原因ですが、 a) 変性した線維の塊(加齢変化など) b) 出血 c) 炎症細胞 などがあります。日常の外来診療でもっとも多いものは、a)です(この混濁だけであれば、代表的病名は、上記の後部硝子体剥離ということになります)。 a) の場合、混濁自体は、治療対象とならないのですが、ときに網膜の病気(網膜剥離、網膜裂孔)の症状・前兆として「飛蚊症」が起きることがあります。網膜剥離・網膜裂孔は特に緊急性のある眼の病気ですので、若干のアドバイスをさせていただきます。 発病後、必ず一回は眼底の精密検査を受けて下さい。 (瞳孔を大きくする点眼液を使用しますので、検査後5~6時間、眼がかすみます) 光が走る症状(光視症コウシショウ)を伴っている場合、網膜が牽引されている危険な徴候ですので、早急な検査を要します。 飛蚊症の数が増えてきた、濃くなってきた、など変化がある場合は、やはり早急な検査が必要です。 飛蚊症の多くは、長期間残存します。 原因によって、治療法はさまざまです。 発症直後は、目の内部構造に変化が起きていますので、診察をお受けになるまで、激しいスポーツ、バイクなど振動する乗り物は避けて下さい。 他の代表的な原因疾患として、 b) 出血:糖尿病、網膜剥離など c) 炎症細胞が貯まる:ぶどう膜炎、感染症など があります。 - ----------------------------------------------------------------- 以 上 -----BEGIN PGP SIGNATURE----- Version: GnuPG v1.2.1 (MingW32) iD8DBQE+WHnwWKpMiVYLcIcRArNEAJwMI729YeSLdzplVyb0g3IjrC534ACcDumX 8WfUBwBHMZlVJn6e+K4iOt0= =tY3g -----END PGP SIGNATURE-----