-----BEGIN PGP SIGNED MESSAGE----- Hash: SHA1 - -- 屈折異常があると、なぜ目が疲れるのでしょうか? Sender: owner-i Precedence: bulk Reply-To: yamagk@purple.plala.or.jp Second Opinion - i@mail i@メール お問合わせの多いご質問に対する一般的な回答です。 やまむら眼科医院 山村敏明  はじめに なぜ屈折異常(遠視、乱視、近視など)があると、目が疲れるのでしょうか。 ヒトの視覚系は、光学的な情報を自律神経中心の精密な神経ネットワークで制御しています。光学的な異常(先天的または後天的な屈折異常)が強ければ、当然目などに疲労症状があらわれます。  オートフォーカス機能(調節)など ヒトは、モノを見るため常にピント合わせをしています。カメラの自動フォーカシングに相当するこの機能を”調節”とよびます。調節に直接関係しているところは”水晶体”とよばれる組織です(カメラのレンズの役目)。水晶体は厚み(=レンズ度数)可変の凸レンズです。この度数を変えるマイクロエンジンが”毛様体筋”です。自律神経でコントロールされている微細な筋肉”毛様体筋”が働きます。  この筋肉に指示を送っている”主役”は、実は”網膜”(デジカメでないカメラのフイルムの役目)に届いた情報(ボケ信号、色収差、みかけの大きさなど様々なもの)だそうです。  網膜”センサー”に映った情報の特性を瞬時に分析し、神経を介して、眼内の筋肉が作動し、レンズの厚さが変わり、屈折度数が変化し、モノが鮮明にみえるということです。このコントロール機構は睡眠中以外、常時ONとなっているわけです。  また、物体が近くにあると、同時に両眼をよせ(輻輳:フクソウとよびます)、瞳孔を縮めています。この反応も自動的に行われています。働いている筋肉は、それぞれ外眼筋、瞳孔括約(カツヤク)筋です。つまり、ほとんどの目の筋肉が常時作動しているということになります。  眼精疲労について  さて、目の疲れを、医学用語では”眼精疲労”といいます。 その原因により5つに分類されます。  調節性:遠視、乱視、老視(眼)など  筋 性:斜視、斜位など  症候性:結膜炎、角膜炎、ドライアイ、緑内障初期など  不等像性:不同視患者が完全矯正眼鏡を使用したときなど  神経性:目にはっきりした原因がないときなど (これらすべての病気についての解説は省略させていただきます。) 実際の臨床では、たとえば、遠視と軽度の外斜位のある患者様がエアコンの効いた乾燥した事務所でパソコン作業に従事しているため、慢性的な目の疲れがある。--このような場合、原因が複合しているため目の疲れが激しいことがあります。  このような症例では遠視の眼鏡を装用し(老眼があれば、近距離・中距離用の眼鏡を合わせることになります)、空気乾燥による角膜障害(または病気としてのドライアイ)を治療しつつ、パソコン作業も休憩を入れながら行っていただくことでかなりの症状改善が得られます。もちろん、職場の空気環境の改善策も重要ですが。 遠視でおこる眼精疲労 調節性眼精疲労の代表的疾患「遠視」につき、ご説明いたします。  遠視は生まれつきの目の状態であり、遠視の人は、遠方を見ているときでも網膜にフォーカスが合っていませんので、”ボケ”ているとの情報が網膜”センサー”から発信します。はっきり見えるように毛様筋(収縮)・水晶体(厚くなる)が作動します。この作用(筋収縮と水晶体厚↑)は通常は”近くを見るときの動き”のため、”近くを見ている”と誤って感じたコントロール中枢が、さらに目をよせたり(輻輳)、縮瞳を指示します。このため、遠視の強い人は近くを見ると、目を過剰によせてしまい内斜視となることがあります(調節性内斜視)。  また、遠視の度数が左右で差(2ジオプトリ程度以上)ある と、遠視の強い方の目は近くも遠くもはっきり見えないため、十分視機能が発達せず弱視になります。  常時調節状態ONのため、目はつかれやすい状態ですが、調節力が十分ある年齢(若い時)の時は、眼精疲労の症状をほとんど自覚しないこともあります。しかし、近くのものを明視するためには調節力を多く使うため、老眼様の症状が早く現れるのも遠視の特徴の1つです。  治療としては、眼鏡等による屈折矯正から始めます。 以上 -----BEGIN PGP SIGNATURE----- Version: GnuPG v1.2.1 (MingW32) iD8DBQE+WHnTWKpMiVYLcIcRAspnAJ9LemzcrCDRumBWwPp67PlHzyG/LACgxmzh cY83DckXWT9LmMC6htME774= =fISH -----END PGP SIGNATURE-----