-----BEGIN PGP SIGNED MESSAGE----- Hash: SHA1 - -- サルコイドーシスについて Sender: owner-i Precedence: bulk Reply-To: yamagk@purple.plala.or.jp Second Opinion - i@mail i@メール お問合わせの多いご質問に対する一般的な回答です。 やまむら眼科医院 山村 敏明 病気の特徴について  身体の複数の部位(臓器や組織)に炎症をおこす病気です。  たとえば、肺と両眼、肺と皮膚と両眼、肺と皮膚とリンパ節など。組織内で肉芽腫とよばれる塊状の炎症がゆっくり形成されます(慢性肉芽腫性疾患)。 原 因  原因は今だ不明ですが、この病気は伝染病ではありません。遺伝に関しては、家族発症例の検討から、メンデル型の遺伝は否定されていますが、多因子遺伝の関与が疑われていますので、今後遺伝子などの詳しい解析が望まれます。  国は「原因不明で患者数が多く、慢性の経過をとる病気」の一部を「特定疾患」と名づけ、医療費を公費負担としております。本疾患についても診断基準を満たすと公費負担(全部ないし一部)が受けられます。この際、”難病”(過去に一時使われた用語)という言葉を聞かれるかもしれませんが、治療法がないということでは決してありませんので、誤解されないようお願いいたします。 発病しやすい年齢  最近の国内の統計では男女ともに20歳代から30歳代に多く(第一のピーク)、次いで50歳代とされています(第二のピーク)。外国では7歳の小児例の報告もありますが、小児期の発病は多くありません。しかし、60歳代の方が本症と診断されることは決してまれではありません。 高齢者の場合、実際には正確な発病時期がわからないこともあります(たとえば、50歳代に最初の症状が出た可能性もあります)。 症 状  皮膚、筋肉、関節、骨、リンパ節、肺、心臓、内臓、脳神経、唾液腺、眼などに炎症を起こしますので、症状も多彩です。症例により炎症の場所が異なりますので、同じ病気であっても主症状が咳症状であったり眼のかすみであったりします。このページでは、眼の症状と治療上大事な症状を選んでご説明いたします。  <眼の症状> 眼の症状をきっかけとして眼科を受診して、本疾患と診断される割合は5割から7割とされています。眼の症状は炎症症状、および炎症の結果生じた合併症の症状です。また、眼球周囲の神経や皮膚などの炎症による症状もあります。  症状名:眼の充血、眼痛、霧視(かすんで見える)、視力低下、飛蚊症(黒いものが飛んで見える)、ゆがんで見える、複視(2つに見える)などです。 <他の症状(一部)>  このほか、咳、息切れ、脈が乱れる(不整脈)、顔のしびれ、神経の麻痺症状などは治療を要しますので、早急に専門医に診てもらってください。 診断について  診断の決め手は病理組織検査です。病気の部位(病変部)を病理組織検査し、陽性所見があれば本疾患と診断できます。通常、検査する部位は皮膚、リンパ節、肺、筋肉などです。気管支鏡を使って、肺の入り口の組織を検査したり、鎖骨(さこつ)の近く皮膚の下のリンパ節を検査する方法が主流ではありますが、”過去に転んでできた膝・肘の傷跡(赤く腫れる傾向のある)”の組織検査で容易に診断できる場合もありますので、専門医の診察をおすすめいたします。  <臨床診断群とは>  いろいろな理由で組織検査を受けられない、承諾できない場合には、臨床症状と臨床所見と他の検査を組み合わせることで診断してもよいことになっております。ただし、臨床所見のみで診断するときは典型的な肺病変(レントゲン診断でBHLとよばれるもの)などがみられ、血液検査などの検査所見も当てはまる場合に限られます。ときどき、”近医で眼の症状・所見だけでサルコイドーシスといわれた”と、外来患者様がお話されますが、これは正確には”サルコイドーシス が疑わしい/に所見が似ている”と言うことです。疾患概念上、眼の所見だけで確定診断はできませんので、誤解されませんようにお願いいたします。  一方、”全身の検査では異常がなかったが、眼の中のみに症状が出ている”患者様の場合、眼の中の組織を採取して診断することは医学倫理上許されることではありませんので、慎重に経過をみながら臨床診断させていただくことになります。この場合も専門医によくご相談下さい。  <補助診断法について> 血液検査、アイソトープ検査など、強い痛みを伴わないいろいろな検査をすることで、本疾患であることを臨床診断したり、”他の病気でない”と医学的に鑑別診断することが可能です。また、後に公費負担を受ける場合、血液検査などいくつかの検査が必要となります。さらに、2つの検査項目(血清アンギオテンシン変換酵素活性、ガリウムスキャンでの取り込み量・部位)を定期的に検査することで、病気全体の活動性(程度)をみることができます(眼の中ですと、眼科検査だけで活動性を容易に判断できます)。 治療について 一般的に、病変が機能障害を起こす原因とならないときは様子をみるだけとなります(定期的な経過観察)。たとえば、両側肺門部リンパ節腫脹(BHL)とよばれる気管支の周りのリンパ節の炎症だけであれば、治療はしません。  以下は治療を要する状態です。  1)肺の中に炎症があり、咳などの症状が続いていたり呼吸機能が低下する恐れがあるとき  2)心臓の内壁に炎症があり、不整脈がでるとき  3)顔面神経などの脳神経に炎症があり、麻痺が出始めたとき  4)眼内の網膜(特に、黄斑部とよばれる最も視力に関係する部位)や視神経に炎症が起きたり、周囲組織の炎症のため黄斑部網膜に障害を残す恐れがあるとき 5)その他、専門医が治療を要すると判断したとき  治療は副腎皮質ステロイド剤を内服します。炎症を抑える対症療法ということになります。  また、眼の症状が強い時には、副腎皮質ステロイド剤の点眼液の他、眼内の癒着を予防するため散瞳薬を点眼します。緑内障を合併することが多いので、眼圧を降下させる点眼薬なども必要となることがあります。 病気の経過  本疾患は経過の長い病気です(慢性疾患)が、副腎皮質ステロイド剤が良く効く病気ですので、機能が障害され後遺症を来す前に適切な治療をすれば、一般的に経過は良好です。気長に専門医の診察を受けてください。 最後に  繰り返しとなりますが、この病気は病初期であっても全身の炎症が軽度で、お薬が不要の方もいらっしゃいます。一方、視力障害や不整脈のため治療を続ける症例もあります。眼の症状があっても、お薬が必要でなかったり、複数の点眼液を続けたり、内服薬を数ヶ月内服したり、と病状に合った的確な治療が大事ですので、必ず専門医に診てもらいましょう。   以上 -----BEGIN PGP SIGNATURE----- Version: GnuPG v1.2.1 (MingW32) iD8DBQE+WHl3WKpMiVYLcIcRAuPgAJ9mHTBBILDALCatJOVaKV50kD2vnQCfT8Kq 2eT+mNX++RplDGUcdIoGJwI= =XxNB -----END PGP SIGNATURE-----