-----BEGIN PGP SIGNED MESSAGE----- Hash: SHA1 - -- 緑内障について Sender: owner-i Precedence: bulk Reply-To: yamagk@purple.plala.or.jp Second Opinion - i@mail i@メール お問合わせの多いご質問に対する一般的な回答です。 やまむら眼科医院 山村敏明  40歳以上の検診者8000名余りを対象とした緑内障疫学調査により、日本人では約30人に1人が緑内障であることが判明し、加齢とともに増える傾向が見出されました。 眼の検診が大事  有病率の高い眼の病気として白内障がよく知られています。白内障も加齢とともに増加しますが、たとえ視力障害が進行した症例でも他の眼疾患がなければ、白内障手術によりほとんど問題なく視力は回復します。  一方、緑内障では、薬物・手術などのあらゆる治療法の目標は病気の進行を予防・停止させることであり、緑内障によりダメージを受け、萎縮した視神経(および細胞死にいたった細胞)を回復させることは不可能であるのが現状です。よって、緑内障の対策の主眼は早期発見と進行前の早期治療であり、ドック・健康診断・職場検診での発見が大変重要といえます。視野が狭いなどの症状を自覚してから眼科医の診察を受けた場合は早期でないことが多いからです。ドック・健康診断・職場検診の受診率向上が緑内障から眼を守る予防にもなるのです。ただし、眼科医が立ち会わない検診では、閉塞隅角緑内障とよばれるタイプの緑内障は、診断不可能と考えられます。また、眼圧測定をしない場合、高眼圧症(後述)の診断はできません。時々、眼が重くなる、かすむ、などの症状がある中高年の方は一度眼科を受診されることをおすすめいたします。 緑内障の診断に必要なもの  緑内障有病率3.56%(40歳以上)となった疫学調査のときに実際使用された眼科器械は、そのほとんどが日常の眼科診療で用いられているものであり、視野検査に用いられたハンフリー自動視野計もオクトパス視野計とともに今日では眼科専門医必須のアイテムの1つであります(大変高価ですが)。 緑内障検診・眼科診察における診断精度 人間ドック、一般検診は、当然ながら一次検診ですから、感度を高くすることが大事なので、(正確さをある程度犠牲にして)疑わしい状態であれば2次検診(通常は眼科医の診察と視野検査など)をおすすめる方針で行われます。よって、2次検診では”正常です”ということはしばしば起きます。  眼科専門医が診察をした時点で緑内障の極早期であった場合、緑内障の診断に”ばらつき”(データーの読み違いが起きること)があるとされます。これは、特に眼底の視神経乳頭・網膜神経線維層などの”早期診断の決め手”となる所見に関して、検者(医者)間に判定の”ばらつき”があるからです。”ばらつき”をなくするため、緑内障専門医を講師とした研修会が頻繁に開催されたり、多くの専門書・刊行物が利用されております。さらに、主観による”ばらつき”を減らすため、また、診断の精度をよくするため最近いろいろな精密診断装置が登場しております。たとえば、視神経乳頭解析装置(HRT)、神経線維層厚測定装置(GDx)などです。視神経乳頭所見解析法の1つであるHRTでは測定の感度95%、特異度80%との報告があります。  また、視野検査中、検査時間が長いと患者さんの眼および精神の疲労のため、データーが不正確となり病気の診断・進行度判定があいまいになる場合があります。このため、精度をできるだけ悪くしないで、検査スピードを早くした改良器械(改良プログラムソフト)がいろいろ開発され、実用化されています。SITA(ハンフリー自動視野計)、TOP(オクトパス自動視野計)などです。 眼圧について  一般の方に緑内障を説明するホームページは多く、また眼科医院待合室には必ずと言ってよいほどパンフレット類があります。マスコミ、TVなどもときどき緑内障をテーマにしておりますので、一般的な解説は省略いたします。このホームページでは、繰り返しを避け(みなさまの知識の整理を兼ねて)眼圧について、2-3お伝えするにとどめました。 緑内障発症の最大リスクファクター=眼圧について  日本人の正常平均眼圧は、欧米人よりかなり低いことがすでに判明しています。しかし、今なお、正常眼圧値は日本人固有のものではなく、国際的な数値を採用しています。それは、1976年のLeydheckerの調査より得られた異常眼圧21mmHg以上(正常者の眼圧平均値+2×標準偏差=20.5mmHgから決定)です。よって、日本の疫学調査によると、眼圧境界値の21mmHgですでに相対危険度3.4(倍)、23mmHgで12(倍)の危険度で緑内障になりやすくなるとされます。正常値の上限に近いと、緑内障になりやすいということです。  今日では、常に眼圧が21mmHg以下であっても緑内障を呈すると、「正常眼圧(ないし低眼圧)緑内障」という病名を使用します。この理由の1つは上述の正常・異常の値の線引き(カットオフ)に問題が残されているからです。さらに、眼圧が本当に低い方でも(欧米人と同じ程度)、約1.25%の頻度で必ず緑内障性視野異常が存在することが判りました。眼圧には依存しない緑内障があるということも事実であり、症状・所見は眼圧依存性のタイプに比べて、多少の違いが見られるようです。 高眼圧症とは  国際的な正常眼圧上限値(圧平式眼圧計で測定した)以上で、診断時点では、視野と視神経ともに異常のない場合を「高眼圧症」とよびます。各国の調査から、初回診察の際に「高眼圧症」と診断された患者さんも年率にして0.5%から1%の頻度で緑内障に移行することが判りました。もちろん、「高眼圧症」の大多数の方は緑内障を発症しないのですが。  将来、緑内障を発症するかしないか、スタート時点ではわかりませんので、しばらく、定期的な検査(4-6ヵ月毎)が必要となります。他に、代表的な治療基準を示しますと、  視神経乳頭陥凹が常に0.6(C/D比)以下で、他の視神経乳頭異常所見がなければ、未治療でよいとされます。  一方、治療の適応となる方は、  1)眼圧値が常に25mmHgを常に越えている  2)”眼が重い感じがする”など高眼圧による症状がある  3)経過とともに視神経乳頭所見が変化する  4)経過とともに網膜神経線維層欠損が拡大する  付 記  他の眼の病気が原因で生じた緑内障、生まれつきの眼圧異常(先天緑内障)については解説を省略いたしました。 参考資料 1)全国緑内障疫学共同調査成績(1988-1989年) 2)塩瀬眼科 塩瀬芳彦先生共著図書 以上 -----BEGIN PGP SIGNATURE----- Version: GnuPG v1.2.1 (MingW32) iD8DBQE+WHliWKpMiVYLcIcRAvEDAKCcRTv+PclOV3QUB9tgLshO77GvgQCeNRH9 /LzBY576G6vNWo1UUWsq8eM= =n8EU -----END PGP SIGNATURE-----