-----BEGIN PGP SIGNED MESSAGE----- Hash: SHA1 - -- 上強膜炎について Sender: owner-i Precedence: bulk Reply-To: yamagk@purple.plala.or.jp Second Opinion - i@mail i@メール お問合わせの多いご質問に対する一般的な回答です。 やまむら眼科医院 山村 敏明 眼球の「外壁」を強膜(キョウマク)と呼びます。 白く、硬い組織です。 眼球の前方では、強膜の周囲を眼球結膜(通称、しろめ)が被っています。 今回のテーマ「上強膜(ジョウキョウマク)」とは、強膜の表面にある血管に富んだ柔らかい薄い組織のことです。上強膜の役割は、強膜に栄養を供給することです。 充血について考えてみますと、しろめ「白目」が充血した場合、(外側から順に) 眼球結膜 上強膜 強膜 この層構造のどこかで炎症を起こしたことになります。たとえば、眼が赤い=診断名:強膜炎のこともあります。 しかし、実際臨床では、2) 3)の病気はまれで、ほとんどが 1)ですので、素人の方が、眼が赤い=結膜炎 と考えても”ハズレ”る確率は少ないのです。 では、上強膜炎・強膜炎が、結膜炎とは明かに異なる点は、 * 眼内に炎症を起こし、緑内障となることがあります。 * 強い眼の痛みを伴うことがあります。 * 一部の点眼液(抗生剤など)は無効です。 しろめが充血し、以下の徴候を伴う場合、眼科医の診察を受けて下さい。 * しろめ、まぶたが同時に腫れる * 痛みがある * 再発する * 体の他の部位にも病気がある たとえば、”ものもらい”のように眼瞼が腫れて痛くなるのですが、同時に白目(眼球結膜)にも充血・腫脹が現れます。しかし、眼瞼には、細菌感染はないので、抗生剤の点眼液は効きません。 上強膜炎について、参考文献 1)のデータを引用し、解説いたします。 米国の報告です。対象は100症例。発症年齢は18才から76才、全年齢層にみられますが、中年女性に多いという特徴があります(平均年齢43才、女性69%)。 平均1年4ヵ月余りの経過観察中、上強膜炎から強膜炎に移行(重症化)した症例は0.3%(分母・分子:眼数)でした。また、再発は34%にみられています。 上強膜炎は、一般的には発病後、2日から21日程度で自然治癒する病気とされていますが、以下の合併症がありますので、眼科での診察をおすすめいたします。 経過中7.8%の症例に、緑内障が併発しました。上強膜炎が再発しやすい症例に、緑内障の合併頻度が有意に多いという結果が得られました。 36%(他報告では26%、32%)の症例が、全身疾患を合併します。内訳は、 アトピー性皮膚炎 乾癬(カンセン) 慢性関節リウマチ 他の自己免疫疾患 その他  死亡率の高い病気が1例にみられています(1%)。 また、他の眼病変を伴うことも多く(51%)、 酒サ(皮膚病の1つ。日本人には少ない) 乾燥性角結膜炎 アトピー性眼炎 結膜フリクテン ぶどう膜炎 が見られています。 今回、強膜炎の解説は省略いたしました。  文献  1) Akpek EK,他:Severity of episcleritis and systemic disease   association. Ophthalmology 1999;106:729-731. 以 上 -----BEGIN PGP SIGNATURE----- Version: GnuPG v1.2.1 (MingW32) iD8DBQE+WHlOWKpMiVYLcIcRAvorAJ9EEkqFfPuRqjlca+HKU1iDPkLDfwCeJCoz 9HPwCiqy0h8GYKUqK50Z2Ps= =nJs0 -----END PGP SIGNATURE-----