-----BEGIN PGP SIGNED MESSAGE----- Hash: SHA1 - -- アルカリ・酸性物質が眼に入ったら Sender: owner-i Precedence: bulk Reply-To: yamagk@purple.plala.or.jp Second Opinion - i@mail i@メール お問合わせの多いご質問に対する一般的な回答です。 -応急処置について- やまむら眼科医院 山村 敏明 数分前に、眼に薬液が入った方は、水道水などの流水で直ちに洗眼して下さい。洗眼中、ご家族・同僚の方は応急処置法をご一読下さい。 お急ぎでない方は、身近にある「アルカリ性物質」(商品名は代表的なものを1つ記載しました)を、まずご覧下さい。 生コンクリート・セメント粉末・液 セメント急結剤:カタコンなど 液状モルタル 生石灰:せんべい・海苔などの乾燥剤 消石灰:運動場、田畑で使用します 石灰硫黄合剤:農薬 染毛剤:ビゲンヘアカラーなど パーマ液:パーマトールなど 脱毛剤:ヘアリムーバーなど 住居用洗剤:マジックリンなど 排水パイプクリーナー:パイプクリーナーなど トイレ用洗剤:ドメストなど カビ取り剤:カビキラーなど 塩素系漂白剤:キッチンハイターなど 換気扇・レンジ用洗剤:電子レンジクリーナーなど 電気食器洗器用洗浄剤: アルカリ乾電池:液漏れ時など アルカリ性の商品には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、次亜塩素酸ナトリウムが含まれています。 酸性物質の代表的なものは、バッテリー液・バッテリー補充液です。 この他、家庭用の洗剤(住居用洗剤、パイプクリーナーなど)には、上記アリカリ性洗剤とともに酸性洗剤も多く発売されています。 塩酸、硫酸、硝酸、酢酸が含まれています。 眼球に限らず、酸・アルカリによる組織・細胞障害の特徴は、アルカリ物質では融解壊死、酸性物質では凝固壊死です。 病理用語のとおり、アルカリは、組織を溶(融)かしながら、急速に(分単位)深部組織まで破壊するので、迅速な処置がとても大事です。 以下の手順での応急処置をおすすめいたします。 自宅・職場で、直ちに、水道水などの流水による洗眼をはじめて下さい. 特に、上記のアルカリ液が眼に入った場合、最低15分間洗眼を続けて下さい. 病院・医院に受診し、処置を受けるまで時間を要しますので、ご自身によるこの応急処置が最も大切です. 密封・持参可能であれば、原因薬品を医療機関へ持参して下さい. 化学薬品名の確認、試験紙などによる涙液pH測定( 正常の涙はpH 約7.4 )が、治療方針の決定などに重要だからです. 医療機関での処置は、まず大量の生理食塩水などで洗眼します(眼に入った液・固形物を洗い出し、希釈する目的で1500ml以上を使用します). この処置は、眼科医が不在であっても可能です. 次に、治療方針の決定のため、眼科医により組織障害度と予後の評価を迅速に行ってもらいましょう. たとえば、Roper-Hall分類の3度以上は、視力障害の残るリスクが高いので、「持続洗眼」とよばれる長時間の洗眼などを開始します。虹彩炎が強い、白内障、緑内障を合併しやすいなど、ハイリスクな症例は、入院治療が必要となります. 医療機関での具体的な治療方法は省略いたします. 医療機関での処置後について 感染予防がとても重要です. 抗菌剤の点眼液は必須とお考え下さい. 炎症に対しては、消炎剤点眼液を使用します. ステロイド系の消炎剤は、優れた効果がありますが、細菌感染を誘発・悪化させることがありますので、抗菌剤点眼液を必ず併用します. また、アトロピン点眼液は、眼内の消炎に有効です. その他、角膜などの損傷治癒を促進させるヒアルロン酸点眼液を使用します. 生理食塩水の頻回点眼を併用することもあります. アルカリ物質が入った場合、2%程度のホウ酸の入った点眼液が中和に適します. 眼痛が強い時、鎮痛剤(内服薬、坐薬)を処方してもらいましょう. 治療用ソフトコンタクトレンズを一時的に必要とすることもあります. 参考図書・文献  1. 急性中毒処置の手引き: 日本中毒情報センター編, 薬業時報社 2. 薬・毒物救急マニュアル: 西勝英 監修, 医薬ジャーナル社 3. 崎元暢 他:角・結膜外傷の救急治療. 臨床眼科 55:26-30,2001. 以 上 -----BEGIN PGP SIGNATURE----- Version: GnuPG v1.2.1 (MingW32) iD8DBQE+WHk7WKpMiVYLcIcRAo+2AJ9Z5hkWo8ZUaSYPzJgbxTj5hNBOOgCgkH5k ofgUON2nfgyopuIlUnEBFFk= =LojJ -----END PGP SIGNATURE-----