-----BEGIN PGP SIGNED MESSAGE----- Hash: SHA1 - -- シックハウス症候群について Sender: owner-i Precedence: bulk Reply-To: yamagk@purple.plala.or.jp Second Opinion - i@mail i@メール お問合わせの多いご質問に対する一般的な回答です。 やまむら眼科医院 山村 敏明 米国では  120万軒のビル内で働く2500万人がシックハウス症候群とのこと。 日本では1996年6月、国会質疑で取り上げられ、話題になりましたね。 4年後の2000年4月5日、厚生省が関連省庁(建設、通産、林野)に呼びかけて「シックハウス対策」検討会を発足させると共に各地で医療側の受け皿確保と今年度中の方針決定を目指すことを表明(新聞発表)しました。 海外では、 Indoor air pollution 室内空気汚染、Sick building syndrome (SBS)  シック ビルディング 症候群という用語を使用します。 国内では、上原裕之さん(シックハウス症候群を命名した方)を代表とする「シックハウスを考える会」の活躍が有名です。 眼の症状について (文献1より)  眼不快感などの原因であり、コンタクトレンズ装用者は不調を来します。 二酸化炭素濃度、ホルムアルデヒド、室温、室内湿度を12のカナダのオフイスで調べたところ(従業者合計877名)、29%が眼症状を有していました。近くがかすむ、眼・のどの刺激感など。 (文献2より)  眼症状をより詳しく調査したイタリアの報告では、涙液層が破綻(ハタン)した人が増えていたそうです。ドライアイの発症ということになります。 ところで、 症例1:7年前、転勤の際、家を建てました。子供の転校も重なっていたため竣工が遅れたにもかかわらず、完成直後の入居となりました。  それからというもの、家族全員、臭い、眼・鼻・気道の粘膜の刺激に苛まれる毎日が続いたそうです。眼のチカチカ、涙、鼻水、セキ、くしゃみなどです。  これは、いわゆるベークアウトが全く不充分だったことも原因の1つです。ベークアウトというのは、家が建ってから一定の期間、室内温度を高め(30℃以上)、換気を繰り返すことで、ホルムアルデヒドなど有害物質を材料内で拡散・移動させ、材料表面から室内へ放散させることだそうです。ただし、ホルムアルデヒドは揮発性有機化合物(VOC)とは異なり拡散の効率が悪い物質のため、換気が最も効果的だそうです。  <ホルムアルデヒドについて>  37%のホルムアルデヒド水溶液のことを一般的にホルマリンと呼びます。理科の標本の保存液(防腐剤)でご記憶の方も多いことと思います。刺激性の強い物質です。ホルマリン消毒という言葉をご存知でしょうか。ほとんどの病原体を死滅させますので、数(十)年前までは、伝染病の患者さんが退院した後、使用した病室を密閉したうえで、ホルマリンを散布することが行われておりました。その後、ホルマリンガスによる環境汚染と発ガン性の疑いが指摘されてからは使用は自粛されています。他の用途として、合板の接着剤に混ぜて用いられたり、防腐剤・防虫剤、断熱材にも含まれています。また、食堂の食器にも使用されているとのことです。  発ガン性も疑われる有害物質ですので、当然環境基準が設定されております。日本(厚生省)は室内環境におけるホルムアルデヒド許容範囲をWHO(世界保健機構)と同じ0.1mg/立方メートル(30分値)に設定しました(規制は指針値)。  <いろいろな有害化学物質(文献3より)>  ホルムアルデヒドほか、住宅、建材、など住居内で発生する可能性のある有害化学物質として、揮発性有機化合物(VVOC、VOC、SVOC)、揮発性無機化合物、微生物起源揮発性有機化合物(MVOC)、空気浮遊粒子状物質(いわゆるハウスダスト)、環境排出タバコ煙(ETC)、粒子状有機物質(POM)、重金属、発ガン物質、ホルモン類似作用物質(環境ホルモン)、二酸化炭素、燃焼排ガスなどなど、多くの物質が人体に障害を与えます。  <有害生物>  さらに室内には健康を害す有害生物として、カビ、ダニ、バクテリア、ウイルス、衛生昆虫、ペット(コンパニオンアニマル)がいます。  症例2: 夏の帰省シーズンになると、必ず可哀想な患者さんがいらっしゃいます。3日前から、お母さんの実家に帰省した男児5歳。鼻水、涙、目のかゆみで困りきって受診。  家は築十数年。押し入れに大事にしまわれていた、お客さん専用の布団で寝た途端の症状でした。可愛いお孫さんのため--。実家の方はダニ、カビ、ハウスダストのたっぷり付いた寝具をプレゼントしたことになります。  ダニの繁殖しにくい条件   温度:50℃以上。 虫体、卵はすべて死滅   湿度:60%以下。繁殖鈍る   駆除の基本          通気、乾燥、寝具類の天日干し          死骸を除去するため、掃除機、洗濯機を使う          結露・カビの発生防止(カビを主食とするダニ退治)  逆にカビの繁殖しやすい条件は   温度:15℃以上。20℃以上特に28℃付近がカビにとって最適。   湿度:70%以上。80%を越えると、猛烈に増殖。   栄養:内装材、ごみ、ほこり   酸素:発育に必要    カビ予防の基本      湿度を人体に快適な50%前後に (冬これ以上に室内を乾燥させカラカラにすると、インフルエンザウイルスの快適環境になりますので特に気をつけてください)      換気をこまめに(湿度を上げないため)      窓の結露はこまめにふき取る(住居は冬にかびてしまう)。      掃除機と拭き取り掃除  室内の空気を汚染する物質は数多くあります。今後、眼に関連する最新情報を逐次ご報告いたします。 化学物質過敏症の診断基準について  <引用文献名・タイトル名など>    特集 化学物質(Multiple Chemical Sensitivity; MCS)  化学物質過敏症-診断基準・診断に必要な検査法-    医学雑誌名:アレルギー・免疫 6巻7号 990-997頁 1999年    北里研究所臨床環境医学センター長 石川 哲 先生  北里大学医学部眼科教授      宮田 幹夫先生   診断基準    (厚生省アレルギー研究班の協力により作成されたもの)  診断に際しての前提:他の慢性疾患がすべて除外されている  <主症状>  (1)持続あるいは反復する頭痛  (2)筋肉痛あるいは筋肉の不快感  (3)持続する倦怠感、強度の倦怠感  (4)関節痛  (5)アレルギー性皮膚疾患  <副症状>  (1)咽頭痛  (2)微熱  (3)腹痛、下痢または便秘  (4)羞明、眼のかすみ、ぼやけ、一過性の暗点出現  (5)集中力、思考力の低下、記憶力の低下、物忘れ、健忘  (6)感覚異常、嗅覚・味覚異常、臭気による幻覚  (7)精神症状:時に興奮状態、うつ状態、精神的な不安定、不眠  (8)皮膚:アトピー、蕁麻疹、湿疹、皮膚炎症、アフタ、かゆみ  (9)月経過多、生理時疼痛、異常など    <検 査>  (1)SPECT  (2)視覚系診断   (a) 瞳孔反応の異常(副交感神経、交感神経の機能亢進または       低下を示す)     (b) 視覚空間周波数特性の明らかな閾値低下 (c) 眼球運動異常 特に垂直性の滑動性追従運動障害(前庭神経 障害など) (3)神経内分泌系検査          診断の決め方   主症状2項目+副症状4項目が陽性であること   主症状1項目+副症状6項目+検査所見2項目   が陽性であること 注記:診断に際しての検査内容(薬品名など)は一部省略いたしました。 参考文献 1)Backman H 他:Indoor-air quality and ocular discomfort   雑誌名 Am Optom Assoc 1999 May;70(5):309-16 2)Muzi G 他:Objective assessment of ocular and respiratory   alterations in employees in a sick building   雑誌名Am J Ind Med 1998 Jul;34(1):79-88 3)健康住宅推進協議会編「空気環境の知識」、オーム社出版局(98年刊) 以上 -----BEGIN PGP SIGNATURE----- Version: GnuPG v1.2.1 (MingW32) iD8DBQE+WHkoWKpMiVYLcIcRAm8dAKCW6EnYK08XXtIPhyV7VokPHLJBTgCguQ2O mXstacHijLINKwWjDFlTOwY= =klk9 -----END PGP SIGNATURE-----