-----BEGIN PGP SIGNED MESSAGE----- Hash: SHA1 - -- 炎症と感染症 Sender: owner-i Precedence: bulk Reply-To: yamagk@purple.plala.or.jp Second Opinion - i@mail i@メール お問合わせの多いご質問に対する一般的な回答です。 やまむら眼科医院 山村 敏明 古代ギリシャ時代から、炎症の4徴候といわれる症状は、 * Calor: 発熱(病気の部位が熱くなる) * Dolor: 疼痛(痛み) * Rubor: 発赤(赤くなる) * Tumor: 腫脹(腫れてくる) です。 毒力の強い細菌・ウイルスなどに感染すると、必ずこれらの炎症症状が現れます。 さらに、炎症が強くなったりすると、 * 機能の低下・消失 が加わります。 ただし、例外(これら症状がそろわない)として、 * 感染症が慢性化したとき * 保菌状態 * 弱毒菌 * 菌自らが産生するバイオフィルムで菌が取り囲まれて、直接体液に接していない状態になったとき * 血液の白血球などが低下して、生体の反応が乏しいとき * 神経毒など特殊な毒素による生体反応のとき などです。 ところが、保菌状態、弱毒菌であっても、体の免疫能が低下したり、本来の生体防御機構が障害されると、突如として強い炎症が現れます。 たとえば、 * 糖尿病になった * 消耗疾患 * 胃を切除したため、胃酸分泌が減少した * 手術の術中・術後 などです。 黄色ぶどう球菌とMRSA 目の感染症の中で、もっとも多い原因菌(細菌)はぶどう球菌です。 とくに、黄色ぶどう球菌は、(近代医学誕生以前から)起炎菌として重要です。 この黄色ぶどう球菌による病気は、 眼瞼結膜炎(伝染性膿痂疹”とびひ”の原因菌でもあり、小児では、まぶたに感染することがある) 結膜炎 麦粒腫(俗称”ものもらい”) 涙嚢炎 眼窩蜂巣炎 角膜炎・角膜潰瘍 眼内炎 などです。  黄色ぶどう球菌の中で、メチシリンとよばれるペニシリン系抗生剤に耐性をもった菌種は、MRSA(メチシリン耐性黄色ぶどう球菌)とよばれます。 近年、増加しており、黄色ぶどう球菌による眼感染症患者から、MRSAが検出される率は 25% との報告もあります。MRSAは、多くの抗生剤が無効であるため、特に、白内障などの術後感染症の原因菌として注目されています。一般的には、薬剤耐性を多く獲得した菌は、毒力が弱くなるといわれておりますが、治療に抵抗性があるため、最終的な術後視力・目の状態は不良となります(毒力と比例しません)。 MRSA眼感染症は、 毒力は通常の菌より弱いので、病気の初期は炎症症状がそろわないことがある(診断・発見が遅れる可能性がある) 手術・糖尿病・外傷などをきっかけに、急激に炎症が強くなる 慢性感染症(涙嚢炎など)の原因菌となっていることが多いので、いつでも他の部位に波及する危険性がある。 元来、まぶたなどの皮膚の常在菌であり、眼球も感染を受けやすい。 結膜・鼻腔粘膜にも常在していることがある(保菌状態) 有効な治療薬が少ない。 薬剤耐性菌は増えつづけている 院内感染(病室、手術室、新生児室、医療従事者など)を起こす などの理由から、眼科においても今後ますます注意を要する病気です。 以上 -----BEGIN PGP SIGNATURE----- Version: GnuPG v1.2.1 (MingW32) iD8DBQE+WHkaWKpMiVYLcIcRAumNAKCi1B9LulcGlNdCTPrwk/HPjvbYhACeMzXo UiiRLwg1iWLshmH6+iNupJ4= =9pJs -----END PGP SIGNATURE-----