-----BEGIN PGP SIGNED MESSAGE----- Hash: SHA1 - -- はやり目について Sender: owner-i Precedence: bulk Reply-To: yamagk@purple.plala.or.jp Second Opinion - i@mail i@メール お問合わせの多いご質問に対する一般的な回答です。 やまむら眼科医院  山村敏明 -初夏から夏季にかけて、特にプールでの感染に注意- 『はやり目』とは 眼の表面<結膜(しろめ)や角膜(くろめ)>に炎症を起こす病気の中で、伝染力の強いウイルスによるものが『はやり目』です。 「かぜ」、「インフルエンザ」のように、流行、伝染(家庭、保育園・幼稚園、学校、職場、病院内など)しますが、伝染経路は主に接触感染によるものです。感染してから症状がでるまで(潜伏期)は1・2日(急性出血性結膜炎)、5日-14日(アデノウイルス結膜炎)です。 眼症状は「しろめが赤くなる」、「まぶたが腫れる」、「涙が出る」、「ごろごろする」、「まぶたの裏にブツブツができる」、「眼が痛い」などです。眼以外の症状として、アデノウイルス感染症では「のどの痛み」、発熱などがあります(その他の症状は「アデノウイルス7型の集団発生」をご覧ください)。 ウイルスの種類により症状、病気の期間に若干の違いがありますが、眼の症状については急性の経過をとり、自然治癒し、最終的にはほとんど後遺症なく治ります。全治まで長い場合でも3週間ほどです。アデノウイルス結膜炎では、発病後1週間ほどすると角膜(くろめ)に混濁がよく現れますが、数ヶ月-数年内には自然に消失します。 まれな合併症として、乳児で時に重症の眼炎となることが報告されています。これは細菌の感染を合併して、<こじれ>てしまった場合などです。また、心肺にもともと病気のある乳幼児がアデノウイルス7型に感染した場合、ときに重症肺炎のきっかけとなりますので、必ず早期に診察を受けるようにしましょう。 病名について (1)流行性角結膜炎 (2)咽頭結膜熱(プール熱) (3)急性出血性結膜炎  (1)と(2)はアデノウイルスによる感染症なので、最近では アデノウイルス結膜炎と呼ばれることが多くなっています。  (1)は「はやり目」の代表的疾患です。   ご不明な点は眼科医にお尋ね下さい 病気を広げないために -以下のことにご留意ください- 通学について  学校保健法により出席停止となります。法律上、原則として (1)(3)は『伝染のおそれがなくなるまで』、 (2)は『充血などの主要症状が消えた後2日を経過するまで』  が出席停止期間です。  必ず、主治医にご相談ください。 人の集まる所へ出かけないようにしてください。 手をよく洗う。流れ出ている水道水で、石鹸を使い、一日何回でも手を洗ってください。 タオルは別にする。 使用後のタオルの消毒には熱湯をかけたり、煮沸する方法が確実です。 お風呂は最後に入る。 自分の眼はさわらない。 プールは眼科医の許可があるまで入らない。 涙やメヤニ(眼脂)にウイルスが含まれています。分泌物はティッシュペーパーで軽くふきとって下さい。こすると目はますますかゆくなります。また、寝るときは(まだ両眼になっていないとき)患眼の涙が耳側へ流れるような頭位がよいでしょう。 いつ伝染するのか   発病後1週間ほどが最も伝染力が強いとさせています。ただし、潜伏期であっても発病直前には、涙の中に伝染を成立させるウイルス量があるとされております。しかし、このような潜伏期の時期に医師が診断することは不可能ですので、家族の中で発病者がいる場合、全員が手洗いを十分に行ってください。 再感染することがあります  一度『はやり目』になっても、再感染することがあります。 『はやり目』を起こすウイルスについて アデノウイルス   ヒトのアデノイド(のどの奥の組織)から分離されたウイルスで、現在A-Fの6亜属、49の亜型が知られています。咽頭結膜熱 、流行性角結膜炎などの原因となります。  咽頭結膜熱  わが国では、咽頭結膜熱では3型、7型が代表的です。ともに、同じB亜属に属するため、症状は非常に似ている。従来から、わが国では3型による流行が多かったのですが、95年から7型が増加しており集団発生もみられるようになり、97年頃から流行パターンは”欧米化”したとされています。  ここで注意すべきことは、7型の臨床症状は3型などに比べて、はるかに重篤であることであります。40℃以上の発熱を伴う例が半数近くにのぼり、有熱期間は1-2週、平均10日とされています(1997年)。特に心臓や肺に基礎疾患を持つ小児が感染すると重症肺炎の誘因となり危険です。実際に国内で入院中の乳幼児数名が死亡しています(1996年)。  <アデノウイルス7型の集団発生について>  初夏から夏季に発生することが多く、主な症状は上気道炎、肺炎、胃腸炎、角結膜炎、リンパ節腫脹、関節筋肉痛、髄膜炎、脳炎などです。  流行性角結膜炎  8型、19型、37型が代表的です。4型も原因となります。 その他のウイルス エンテロウイルス70  急性出血性結膜炎の原因ウイルスです。1969年、アフリカのガーナで最初の流行があり、同年のアポロ11号になぞらえアポロ病とも呼ばれています。 コクサッキーウイルス  本ウイルスのA24変異株も急性出血性結膜炎を起こします。 <検査について> 特に、アデノチェックとよばれる検査法を使うと、涙、結膜のアデノウイルスの検出が5分程の短時間で可能です。しかし、3型(および7型)はウイルス培養法やPCR法で証明されても、本検査法では陰性(偽陰性といいます)となりやすいウイルスタイプですので、診断に際し特に注意を払う必要があります(10歳以下、および30歳代で多いタイプ) <論文について> 1985年から10年間に及ぶ札幌市での臨床データが発表されました。 <文献1)を引用いたしました> ウイルス性結膜炎、急性ろ胞性結膜炎と臨床診断された後、ウイルス学的な検査にて病原体が確認された合計965症例について。  アデノウイルスは721症例(75%)から分離され、残り244症例(25%)はアデノウイルス以外が検出されました。  (965症例を分母とした)病原体別の頻度は アデノウイルス------75% クラミジア・トラコマティス--14% 単純ヘルペスウイルス---11% エンテロウイルス----- 1% でした。   最下段のエンテロウイルスは急性出血性結膜炎という病気を起こすウイルスですが、1985年のみ検出され、その後9年間分離されていません。  アデノウイルスは3-5年周期で流行をくりかえし、7-8月の夏に多い特徴がありました。この中で3および4型は10歳以下、および30歳代で高率でした。また、他地域に比べて、札幌市では4型が多いとのことです。 単純ヘルペスウイルスは20歳代に多い。 クラミジア・トラコマティスは、0歳児、20歳代に多く、季節としては、3月、夏に多い。 文献1):  Saito-Inagawa W,Aoki K,他:Ten years' surveillance of viral conjunctivitis in Sapporo, Japan. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. (1999) 237:35-38 以上 -----BEGIN PGP SIGNATURE----- Version: GnuPG v1.2.1 (MingW32) iD8DBQE+WHkQWKpMiVYLcIcRAk5/AJwLJIB8rMyQgLSnvgtlGETgljnSmACdFv27 1fD6P+eaKMO7jnkb46RHABY= =DOIu -----END PGP SIGNATURE-----